何と言う腹筋の修行

『Dragonball Evolution』

ジャンル:アクション
監督:スター・オーヴァーシーズ
主演:ジャスティン・チャットウィン、エミー・ロッサム

ストーリー

祖父と共に拳法の修行に励む、『特別な』青年、悟空。
18歳の誕生日、彼は祖父から『ドラゴンボール』と呼ばれる不思議な球を贈られる。
7つ揃えばあらゆる願いが叶うというドラゴンボールだが、その頃、かつて封印されたはずの大魔王ピッコロが、ドラゴンボールを目的に動き出していた……。
誰もが知ってる最強のスーパーコミック・ドラゴンボールが、まさかの実写映画化。
『誰も観た事が無いドラゴンボール』、解禁。







1.無難な映画紹介


 はい、というわけで久々の映画レビュー。タイトルは上の通り、噂の作品、ドラゴンボールです。
 もはや説明不要の伝説的怪物コミックが、最新のVFXによって新たに誕生しました。
 映画化が決まった当初から色々言われて来ましたが、結局のところ、原作とは切り離された別次元の物語として観るのが正解でしょう。正解です。
 7つ揃えば願いが叶うと呼ばれるドラゴンボール。2000年前、人類を滅ぼさんとして現れたピッコロ大魔王の復活。そして、悟空の背負った運命。
 豪華なキャストと迫力の映像で送る、ルール無用のスーパームービー。えっと……とりあえず観てみるのもアリです、多分!








2.ネタバレ有マジ感想




 マジ感想に行く前に、まず言っておきたいことがあります。
 それは、我々はあまりに簡単に物事を非難してしまっているのではないか、ということです。
 非難することは簡単です。どんなものでも、揚げ足を取ろうと思えば取れます。そこに悪意があろうと無かろうと、ボロクソに言おうと思えば幾らでも言えるものなのです。「お前は根暗じゃなくて完全に性格暗いよ」とか「この前読んだお前の小説、最後の盛り上がりがイマイチだよね」とか「100点満点中60点かな」とか!! 畜生!!!
 もうね。やめようと。そういうの、やめちゃおうよと。優しい気持ちを忘れないって大事ですよね。
 とはいえ、この21世紀。そんな甘い考えではまかり通らないこともいっぱいあります。人に優しくしたが故に辛い目に遭うなんてこたぁ日常茶飯事です。嫌な世の中ですが、それもまた一つの事実なのです。
 じゃあどうすればいいのか? このクソみてぇな世の中でよぉ、オレたちが出来ることなんてどれくらいあるんだよ?
 そこに、僕が一つの回答を提示しましょう。
 褒めるのです。
 けなすのではなく、甘やかすのではなく。なんにだっていいところは一つくらいあるものですし、そこを褒めちぎればいいのです。
 欠点を見つめることも重要ですが、良いところを褒めるのも同じくらい重要です。絶対重要。なはず。
 以上の点を含めて、この『ドラゴンボール』。褒めてみましょう。



A.褒めよう!





 …………。
 ……CG、ですかね。
 いや、ホントCGは凄かったんですよ? 迫力もあったし。特に戦闘中のCGとか。
 というより、本当に凄いのはそれらのCGを有効に用いることが出来ていた、という点でしょうか。ただCGを使うだけじゃなくて、ちゃんと考えられて使われている。その結果、ただの肉弾戦(すっごい跳んだりしますが)も普通にカッコいい映像になってる。そこはホント、素晴らしいです。








 …………。
 そろそろマジな本音、言っちゃっていいですかね?



B.ドラゴンボールファンとして観た場合のマジ話




 ……もうね。上映時間=笑いとの戦いでした。
 まずね、ピッコロ大魔王? うん、別にいいんだけどね。うん。
 あの人さぁ、いっぺん悟空の家ペシャンコにしてたよね?
 ……なぁスタッフ。
 気をサイコキネシスか何かと勘違いしてないか?
 ……いや、まぁいいんだけどね。同じようなモンだって言われたらそれまでだし。でもさ、やっぱりこう、『拳を握って家をぐちゃっと潰す』ってのは違うと思うんだよ。原作から見てね。
 あとね、チチ? チチってあれね、悟空の嫁ね。うん。まぁチチが悟空のクラスメートってのは、まだ許せるんだよ。
 でもさ。
 自分が修行してるところを目撃した悟空に向かって「家族には内緒なんだけど、あたしって……戦士なの」って
 どんな電波女だよ。
 かと思えば、変に原作に準拠してる部分もあるしね。魔封波とか。
 ……。
 でもやっぱ、それをマフーバってカタカナで言うの、やめてくれない?
 まぁ封じ込めるのが電子ジャー、ってことにならなかったのは仕方ないけどね。それはね。仕方ないよね。
 もー……なんだろ。見知ったキャラの名前が出てくる度に笑ってたよ。
 っていうか、何? かめはめ波を心臓マッサージに使うとか、何かそれはもう色々アウトじゃね?
 おまけに、最後のピッコロ戦。ピッコロ、まさかお前、最後に使ってたのって元気球じゃないよな?
 で、それに対する悟空。かめはめ波と同時に跳ぶのはネタとしか思えんかったぞ。ホント、変なとこで原作準拠しやがって。
 っていうか、スタッフはZ以前の話を描きたいのか、それともフリーザ編の話を持って来たいのかはっきりしろ。ピッコロは結局、大魔王なのかナメック星人なのかどっちなんだよ。どう扱えばいいのか分からん。宇宙人ってことでいいの?
 最後、ラストシーン! まさかお前ら、続編出すなんて言うんじゃないだろうな!? ホントにそんなこと言わないだろうな!?
 ……もー。



C.原作抜きにしてみた場合の感想




 さて、ではここから少し真面目に、この映画を考えてみようと思います。
 上で散々言ってますが、これは正直、原作ファンならしょうがないと思います。
 なんでもそうですが、映像化というのは非常に難しいものなんですよ。特に映画の場合、どんな物語でも2時間という枠に切らなければならない。その場合、原作と違いが出てくるのはどうしても仕方無いわけで。
 この映画もご他聞に漏れず、残念ですが原作とはかけ離れた作品になってしまっています。ちょこちょこ原作に合わせようとしてるのがまたちょっとイラっとくるんですが、まぁそれはいいです。
 僕がここで言いたいのは、「じゃあいっそのこと原作との比較をやめて考えてみようよ」ということなのです。
 勿論、原作ファンが多ければ多いほど、映像化には大きな責任が伴います。原作ファンは原作が好きだから見るわけで、それが裏切られるとするならば、やはりそこには大きな落胆と非難の気持ちが湧き上がるのが自然というものでしょう。
 しかし、上にも述べたとおり、映像化には様々な制限が付きまといます。コミック作品を実写化しようというのなら、なおさらです。
 なので、ここでは上で言ったような内容を全て頭の中から消し去り、純粋に一つの映像作品として観た場合の僕の感想を述べてみたいと思います。



 何だろう。何かここまでの流れを全部ぶっ壊すみたいで嫌なんですが、実はそんなに酷い作品では無かったりします。
 ストーリーもそれなりにまとまってるし、アクション映画としても、CGの力もあってかなり力の入ったアクションが見れます。
 悟空という青年も、前半は『普通じゃない』自分の状況に苛立ち、また祖父の教えを頑なに守ろうとする(=他人によりかかっている)というヘタレであるものの、後半はそれらを覆し、一人の青年として強く成長します。祖父やガールフレンドに言われた「自分を信じる」という言葉を胸に、最大のピンチを克服する過程はなかなか熱い展開でした。
 ただ、そのようなキャラクターの成長という部分はともかくとして、キャラクターの心情という点についてはあまり描ききれてなかったかな……というのが正直な感想です。
 例えば、ブルマとヤムチャ。2人は途中でいい感じの仲になりますが、そこに至る過程があまりに呆気なく、心情の移り方としては酷く性急なように感じました。
 愛には時間も理由も要らないということでしょうか。よく分かりませんが、納得出来ない自分がいるのは確かです。
 また、悟空=大猿という事実を告げられた際の悟空の反応も、ちょっと適当すぎる気がします。幾らなんでも、そんなすぐに動揺するなよお前。薄々勘付いてたとかそういうわけでも無いのに、もうちょっと反抗しろよ。
 で、そういう細かな心情経過がきちんと紡がれていかないせいか、作品全体としてみると、物凄く軽いもののように感じられてなりません。
 自分を信じるということ。そこにルールなどは無いということ。全ては自分が決めるのだということ。これらの言葉が作中で軽いものになってしまっているのは、やはり心情描写を疎かにした結果ではないのかなと、僕はそう思います。


 ……うん。コレ書く前から思ってはいましたが、やっぱり原作があまりにも大きすぎたんだなと思います。
 もし、コレがドラゴンボールとは何の関係も無いアクション映画だったなら、A級……とは言わないまでも、ありふれたアクション映画としての評価は得られていたでしょう。
 でもなー……やっぱ原作ファンからすると、最大の見せ場であるはずの最後のかめはめ波は爆笑の対象になっちゃうんだよなぁ。
 なかなか正当な評価をし辛い、可哀相な映画。ドラゴンボールとは、そういう映画でした。





 いやー、しかし上映中はホント、笑い堪えるのに必死だったなぁ……。多分コレ、全世界からすっごい叩かれるんだろうなー……。




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