亀ちゃんの卒業、寂しいなぁ

『相棒〜劇場版〜』

ジャンル:サスペンス
監督:和泉聖治
主演:水谷豊、寺脇康文

ストーリー

テレビ塔に吊るされた男の発見から始まった、連続殺人事件。
警視庁特命係の右京は、独自の観点から犯人の手がかりを掴み、その犯人とコンタクトを取ることに成功する。
やがて、犯人と特命係との対決の舞台は、三万人のランナーとその観衆を人質にした、東京ビックシティマラソンに移行する。
果たして、犯人は誰なのか? そして、その目的は?
前代未聞の知能戦がいま、幕を開ける。







1.無難な映画紹介


 ご存知、同名のテレビドラマシリーズの劇場版です。
 頭脳明晰な右京と、体力勝負の亀山。警視庁特命係の名物コンビが、劇場版に相応しい難事件に挑みます。
 何と言っても、見所は右京と犯人との壮絶な知能戦。二転三転する事件の行方は、結末が全く予想できません。
 また、この映画、犯人が『捕まった後』も、事件は続きます。
 果たして、犯人は何が目的なのか。
 かつてこの国で実際に起きた『あの事件』を題材にした、サスペンスだけでは終わらない珠玉の一品。
 興味がある人も、そして無い人も。是非、鑑賞してみることをお勧めします。








2.ネタバレ有マジ感想




 はい。というわけで、相棒です。イーサーに言われたとおり、こっちで本格的な感想書きたいと思います。
 単刀直入に言います。面白いです。
 まぁ個人の主観に依るものでもあるんでアレですが、少なくともテレビドラマのファンの方は観ても損は無いでしょう。それほどに練りこまれた、上質なサスペンスです。
 そもそも、この『相棒』というテレビドラマ自体、他のサスペンスドラマと比べると、色んな意味でやっちゃってるドラマです。
 単純な事件というのは無きに等しく、政治家のイヤンな部分を取り扱ったものから、小学生の少年が犯人であるものまで。毎回、視聴者に展開を読ませないような工夫が施された脚本は、ホント『美しい』の一言に尽きます。
 で、この劇場版ですよ。なんかもう、観てて目から鱗がボロボロ落ちてくる感じでした。
 さて、なんでこんなにベタ褒めしてるかというと、ですね。大雑把に言って、二つほど理由があるのです。以下、その点を軽くお伝えしたいと思います。





A.サスペンス映画としての完成度の高さ


 単純な意見かも知れませんが、まずはコレ。ホントにサスペンス映画としての質が高いのです。
 基本的に、サスペンス映画というのは『分からないこと』があってこその映画です。まぁ付加価値として人間ドラマやら何やらが付いてくることもありますが、やはりそれらは単なるおかずであり、やはり全体の芯を貫いているのは『謎』であると思います。
 そして、鑑賞者はその『謎』の答えを探りつつ、映画を観ることとなります。しかし、です。
 実際にその『謎』の答えを解明してしまった鑑賞者は、こう思ってしまうのです。
 「なんだ、やっぱり思ったとおりだよ」
 これは、答えに辿り着くまでの時間が短かければ短いほど、強い気持ちとなります。要するに、なんかこう、ちょっと落胆してしまうわけです。
 勿論、「やった、オチが読めたぜ!」という爽快感も、あるにはあるでしょう。けれど、それはあくまでもオチを読みきった自分自身の能力に対する評価であって、作品自体の評価には繋がらないものだと思います。
 恐ろしい話ですね。人間って怖い。超怖い。
 まぁここらへんの話は『サイレン』の項でもちょっと述べたのと、なんか知ったかぶり臭くて自分で自分がちょっとキモいなぁとか思う部分もあるので少しアレなんですが、あながち間違った意見でも無いと思うのです。
 で、話は相棒に戻りますが、何が言いたいかというと、ですね。結局この映画、『謎』の答えを導くのが非常に困難なのです。
 いや、勿論そりゃ、頭の切れる人は読めると思いますよ? 特に、犯人は「なんとなく」で分かってしまう方もいらっしゃるかも知れません。
 ですが。『犯人が何を望んでいたのか』という点まで読める人は、なかなかいないんじゃないでしょうか?
 大体、映画のタイトルからして、よく考えりゃ意味不明です。東京ビッグシティマラソンって、そんなもん狙ってどうすんだよお前。銀行とかならまだしもさぁ……。
 更に更に、一口に『狙う』って言ってもお前、何をどう狙うんよ? 観客? ランナー? 全員? いや全員は無理だろ常識的に考えて。ネットスラングでいうjkってヤツですね。
 えーなんか話がずれましたが、結局そういうことです。実はこの映画、最初っからわかんないことだらけなのです。
 しかし、その分かんないことだらけの内容が、最終的には一本の線に美しく帰趨する。単純なようでいて、これって結構難しいことではないでしょうか。
 なんか既にこの時点で随分話が長くなってしまいましたが、結局はそういうことです。読みきれるか、全てを? 多分無理だろこれは。そういう意味で、この映画、かなり優れていると思います。是非御覧アレ。





B.テーマの鋭さ


 お次はこれ、この映画の一貫したテーマに関する話。
 映画を観た方なら分かると思いますが、コレ、結構心にグサッときます。
 当たり前です。だって、日本国民全員が、この映画がモチーフにしているあの事件の『当事者』なんですから。
 あの頃、僕は確か高校生でした。PCも持っていない頃でしたので、情報源は新聞とテレビくらいしか無かったのですが、それでもあの事件に関する社会の反応はよく覚えています。
 あの事件に関して、ここで僕が述べられることはありません。僕が何を述べたところで過去は変わらないし、意味も無いでしょうから。
 しかし、この映画の犯人は言いました。「絶対に忘れてはならないのだ」、と。
 全くもって、その通りだと思います。
 あの時の国民が何をしたのか、そしてその後どういう反応をしたのか。それがどんなに心苦しいことでも、忘れるべきでは無い、というのは真実だと思います。
 そして、そんなことをある意味ストレートに伝えようとしたこの映画。正直言って、よく勇気を出せたな、と思うことしきりです。
 勿論、制作の過程では、様々な問題があったでしょう。しかしそれでもなお、伝えたいものがあり、それをこの『相棒』という題材で作り上げたことは、本当に素晴らしいことだと思います。
 少し真面目な話になってしまいましたが、僕の感想はこんな感じです。ホント、良い映画だと思います。1800円払う価値があると思いますよ? レンタルででもいいので、是非観て欲しいと思いますです、ええ。










 あ、ちょっと真面目に書いてしまったので、バランス取る意味でも軽い話題。
 俳優さんの話なんですが、(今更ですが)西田敏行さんって、ホントに演技上手いですね。
 恥ずかしながら、僕はあまり西田さんの出ている映画って観たこと無いんですが、ちょっと本気で感動しました。
 この感想を知人に言ったところ、「何を今更」と馬鹿にされたのですが、イヤホント、西田さんをノーマークだった自分が恥ずかしいです。とりあえず、機会を見て『太陽は沈まない』(だったかな?)でも観たいと思います。
 あと、柏原さんは格好良かったです。水谷さんは相変わらず渋いです。あんな大人になりたいですが、まぁ無理でしょう。いえいえ、全てはなりたいと願うことから始まるのですよ、亀山君?
 そんなどうでもいい物真似(にもなってない)をしつつ、この項を終えたいと思います。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。時間取らせてすいません。
では!




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